小学校の全教科書に来春からQRコード 文科省が検定結果公表
文部科学省は28日、2024年度から小学校で使われる教科書の検定結果を公表した。小中学校で1人1台のデジタル端末が配備されてから初の検定となり、小学校の全学年・全教科の149点が二次元コード(QRコード)を掲載。学習指導要領が重視する主体的・対話的で深い学び(アクティブラーニング=AL)などの充実を図るため、QRコードのリンク先で提供する動画や音声などのデジタル教材も充実させた。
小学校の教科書は、17年に改定された現学習指導要領を適用した2回目の検定。国の「GIGAスクール構想」で21年度末までに、全国の小中学生にデジタル端末をほぼ配り終えた。各出版社は端末が手元にあることを前提に、現行教科書をバージョンアップさせるなどして検定を申請した。
文科省によると、小学校の全11教科で149点の申請があり、いずれも検定に合格。その全てにQRコードが掲載された。前回18年度の検定でも全体の164点中155点(95%)の教科書に盛り込まれていたが、今回は教科書1点当たりのQRコードの数を大幅に増やした教科書が多かった。
教科書検定基準は、QRコードなどを掲載する場合、教科書の内容と密接な関連があり、出版社の責任で管理できるウェブサイトをリンク先にすることを求めている。ただ、参照するデジタル教材の内容自体については、教科書の補助となる「教材」の位置づけで検定対象にはなっていない。
各出版社は、リンク先で提供する動画やワークシートなどの教材を大幅に拡充し、前回の10倍以上にコンテンツ数を増やす教科書もあった。指導要領が重視するALでは、オンラインによる議論やネットを使った調べ学習などが日常化し、教科書づくりでもデジタル対応が進んだ格好だ。
24年度からデジタル教科書の使用が先行して始まる英語(5、6年生)では、発音やアニメーション、動画を使った会話例などを取り入れた教科書も目立った。
一方、全教科の平均ページ数の合計(A5判換算)は前回比2・0%増の1万4813ページでほぼ横ばいに抑えられた。新型コロナウイルスに関する記述が増えた保健体育で前回比21・0%増だったが、内容を簡潔にしたり、巻末の付録をQRコードのリンク先に移したりしてページ数を減らしたケースもあった。各社が「重い教科書」や「詰め込み教育」に対する学校現場の懸念を考慮したとみられる。内容が学習指導要領に沿わない場合などに付けられる検定意見は2149件で前回より509件減だった。
また、今回の検定は高校の一部教科書も対象で、共通教科で47点の申請があった。開隆堂出版の英語コミュニケーションⅢの教科書1点は、検定意見に相当する箇所が100ページ当たり100カ所以上あることから不合格になり、数学Ⅲで1点が取り下げられたため合格は45点だった。【深津誠】
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